深まる欧州金融危機。勝負は2017年秋!?

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-09-07-10-20-38

(出所 News week日本版)

米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は8月26日の講演で「米雇用が改善し、追加利上げの条件は整ってきた」と述べ、昨年12月に続く利上げに意欲を表明する。

特に、欧州動向が気がかりだ。欧州は依然として金融危機に陥っているといってもいい。

7月29日には欧州銀行監督機構(EBA)が主要51銀行のストレステストの結果を公表した。イタリア第3位のモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(モンテパスキ)が今後3年間の景気後退で、自己資本が全て吹き飛ぶという最悪の結果になった。8月18日には同銀行のCEOが粉飾決算の疑いで調査を受けていることが報道されるなど、自力再建は厳しい状況にある。モンテパスキは1472年創立の現存する世界最古の銀行だが、崖っぷちまで追い込まれている。

他の金融機関はどうか。欧州の銀行株はリーマンショック直後の安値を割り込み、低迷している。リーマンショック前2007年と現在の株価を比較すると、スペイン第1位のサンタンデールは5分の1、ドイツ第1位のドイツ銀行は10分の1、第2位のコメルツ銀行は50分の1と壊滅状態である。

モンテパスキに限らず、個別銀行の業績不振ではなく、欧州全体が金融危機に陥っていると捉えるべきだろう。

金融危機といえば、2008年のリーマン・ショックが連想される。世界の株式市場で2000兆円もの時価総額が吹き飛ぶ大惨事となった。この危機の解決に大きな役割を果たしたのが、2008年10月3日に成立したTARP(不良資産救済プログラム)である。アメリカ財務省が最大7000億ドル(当時80兆円)の公的資金を無担保で金融機関に注入した。健全な銀行も危機的な銀行も区別をつけず強制的に資本注入することで、「次はどこが危ない」という不安の連鎖を断ち切ることができた。

ところが、欧州では2016年1月にEUは「ベイルイン規制」を導入してしまった。ベイルイン規制は、銀行に公的資金を注入する場合、株主や社債保有者に損失を負担させるというものだ。これでは銀行に公的資金が注入された場合でも、「次は自分の銀行が危ないかもしれない」と他の銀行の株主や債券保有者が慌ててしまい、不安の連鎖を生み出してしまう。事実上公的資金の注入ができないのだ。

政府が公的資金を出せないのならば、出さざるを得なくなるまでマーケットは追い込むかもしれない。それも政府の対応力が最も落ちている時が狙われる。前述のリーマンショックはブッシュ政権の末期、大統領選挙の真っ最中に危機を迎えた。欧州も政権が不安定になったところで危機が深まるリスクが高まるだろう。

リスク要因になるイベントは3つある。1)今年10月8日のイタリア国民投票、2)2017年春のフランス大統領選挙および議会総選挙、3)2017年の秋のドイツ総選挙、である。この中でドイツ総選挙に注目しておきたい。

理由はメルケル首相が続投するか不透明だから。彼女の指導力があったからこそ、ギリシャ債務危機や難民問題などEU始まって以来の危機にどうにか対応できていると言っても過言ではない。2015年にはタイム誌の「今年の人」にも選ばれた。来年秋にメルケル首相が表舞台から姿を消すことなれば、欧州の金融危機も正念場をむかえることになるだろう。

金融危機が深まれば、連鎖倒産を恐れてあらゆる業種の株価が下落する。裏を返せばあらゆる会社に安く投資できる千載一遇のチャンスでもある。筆者はリーマンショックの最中に、それまで行っていた全世界株式指数に連動するインデックスファンドへの積立投資を増額することで、2倍近いリターンを上げることができた。

世界のアナリストや経済学者が絶望的な見通しを示すなかで、積極投資に踏み切れたのはなぜか。それは、世界資産家ランキング第3位のウォーレン・バフェット氏の金言のお陰だ。

「We simply attempt to be fearful when others are greedy and to be greedy only when others are fearful.(他者が貪欲な時に恐れ、恐れている時に貪欲に。)」金融危機でマーケットが恐怖一色になった時こそ、貪欲に投資する時だと判断した。

あのリーマンショックから8年経過した。米国の株式指数は史上最高値付近で推移しているが、ITバブル崩壊からリーマンショックまでの期間も8年だったことを踏まえると、いつ暴落に転じてもおかしくない。株価が崩れ、マーケットが恐怖一色になったとき、今度も「待ってました」と貪欲になれるよう準備しておきたい。

短期的には、FRBは9月20~21日に次回のFOMCを開く。基軸通貨ドルなど外国為替市場を中心に金融市場にも影響してくるだろう。注目しておきたい。

(文責 中村剛啓/なかむらたけひろ)