ディープラーニングによるAI創作物最前線

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(TAILOR BRANDSより)

現代の私たちが過去の大芸術家たちの新作を楽しめるような世界。そんなことは考えもしなかったし、仮に望んだとしても決して実現しなかった。しかしそれがAIによって実現しようとしている。

キーワードは「ディープラーニング(深層学習)」。人間にしか出来ない推定や分析に有用と思われる情報を、この生データから抽出し、特徴として使えるようにするのが特徴抽出という。これをコンピューターが自動的に出来るようになった、という点が大きな特徴である。

具体例を紹介するともっと分かりやすい。例えば、オランダを本拠とする総合金融機関INGグループが出資、17世紀の巨匠レンブラントの全作品をデータ化し、ディープラーニングによってAIにその特徴を学習させ、肖像画を描くように命令し、AIが18か月かけて描き出した絵画に取り組んだプロジェクトに「THE NEXT REMBRANTDT」がある。( https://www.nextrembrandt.com

人の手が加わっていないAIの創作で、その作品はレンブラントが描いたとしか思えない出来。まさに死後350年後の新作だ。

他にも人工知能による創作の事例はいくつも出てきている。

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Beyond the Fence
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Beyond the Fenceは2016年2月22日より上映された世界初のコンピューターが創作したミュージカル。このミュージカルは、ケンブリッジ大学の研究グループが、ゴールドスミス・カレッジが開発するソフトウェア(What-If Machine)を使ってあらすじなどを書き出し、スペインのコンプルテンセ大学が開発するストーリージェネレーターPropperWryterを使ってストーリーに深みを与えて仕上げたものです。さらに音楽はイギリスのダラム大学にある作曲コンピューターシステム(アンドロイド・ロイド・ウェーバー)を使っている。

■Beyond the Fence

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ラムス(lamus)
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スペインのマラガ大学が開発した作曲する人工知能「ラムス (lamus)」はメロミクス・アルゴリズム(Melomics) によってわずか8分で楽曲を自ら作成。MP3や楽譜(PDF)、MIDI、XMLなどの形式で吐き出すことができ、販売もされている。

■Nasciturus – Iamus Computer

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Tailor
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米Tailor Brands(テイラーブランド社)が提供するサービスで、人工知能でロゴを自動的にデザイン。ロゴの文字や色、何をしたいか、ロゴのタイプ、デザインの好み、営んでいるビジネスの種類等の情報を入れると利用者に合ったロゴをわずか数分で生成します。

■Tailor Brandsーinstant Logo Maker&Online Logo Design
https://www.tailorbrands.com
さらに、私たちジャーナリストにとって、今後お付き合いしていくことになる「記事自動生成」機能を持つAIも登場している。

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Narrative Science & Automated Insights
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ナラティヴ・サイエンス(Narrative Science)、オートメイテッド・インサイツ(Automated Insights)両社ベンチャーは、生データから自動的に記事を作成するプログラムを開発している。ナラティヴ・サイエンス社は、数字の多い金融やスポーツのニュースを自動的に作成するAIを開発し、単なる数字の羅列ではなく、人情味のある書きぶりができるとのこと。また、オートメイテッド社の技術はAP通信などに使われ、企業が発表する業績情報をニュース記事として配信している。

■Narrative Science
https://www.narrativescience.com

■Automated Insights
https://automatedinsights.com
日本ではどうか。もちろん、日本でも取り組みは始まっている。例えば、ショートショートの神様と言われたSF作家星新一。星新一のショートショート全編を分析し、エッセイなどに書かれたアイデア発想法を参考にして、人工知能におもしろいショートショートを創作させることを目指すプロジェクトが公立はこだて未来大学の松原仁教授を中心に2012年9月に始まっている。「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」

http://www.fun.ac.jp/~kimagure_ai/index.html

私が最初に星新一の小説を読んだのは小学生の時だったが、初めて読んで衝撃を受けた。独特の世界観に秀逸なオチ・・・何度読んでも面白いその内容は、もともとマンガやゲーム、外で遊ぶのが好きで本などは読まない私が、小説好きになるきっかけを与えてくれた本だった。

その星新一の「新作」が読めるなんて、考えられないほど楽しくなる。
そうなると、気になるのがAIが創作したAI創作物について誰が権利を持つのか、という点だ。政府もこの問題に対して、知的財産戦略本部が今年の5月、「知的財産推進計画2016」を公開し、AIが創作した作品に対応する知財制度の在り方を検討する姿勢を明らかにしている。

■「知的財産推進計画2016」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/chizaikeikaku20160509.pdf

現在日本では著作物が創作された時点で著作権が生じるが、著作物というのは法律上「著作者が思想又は感情を創作的に表現したもの」と規定されているため、AIが創作したものは著作物にあたらず著作権は発生しない。

そこでAI創作物にも何らかの保護を与えようというのが上記計画の一部であるが、その内容は「…市場に提供されることで一定の価値(ブランド価値など)が生じたAI創作物については、新たに知的財産として保護が必要となる可能性があり、知財保護の在り方について具体的な検討が必要である。」と1頁に記述されるにとどまっている。

多くの人が最新の技術と膨大なデータを使って、AI創作物を生み出し、まるで現存しているようにAIアーティストが、新たな作品を次々と創り出す。過去の偉人の新作を見たいという人たちの情熱も掛け合わされることで生まれるAI創作物の著作権は守られていくことになると思う。

法律的にもビジネス的にも非常に興味深い論点、これからも追いかけていく。

(文責 中嶋憲太郎/なかじまけんたろう)